みなさんこんにちは!
2025/8/8にヨルシカの新曲『修羅』がリリースされました!
この曲はドラマ『僕たちはまだその星の校則を知らない』の主題歌にもなっています。
このドラマは、ある弁護士が学校のさまざまな問題(いじめ、保護者とのトラブルなど)について学校に対して助言する「スクールロイヤー」として活動していく過程を描いたものです。
法的な根拠をもとに生徒を支え守る仕事ではありますが、生徒の中には法律やルールなどの理屈では拾いきれない感情や葛藤があります。
・多感でそれぞれの事情の中で葛藤を抱えた生徒
・彼らそれぞれの感情に寄り添いきれぬまま、ルールにのっとり指導せねばならない教師
・法律という理屈のみをもとにルールという道筋を作らなければいけないスクールロイヤー
それぞれの登場人物がそれぞれの役割の中で孤独を抱えながら、いかに共鳴していくのかを描いた作品になっています。
ドラマの内容とも深く関わりがある歌詞になっていますので、おおまかなあらすじに触れた上で歌詞の考察に入っていきましょう。
ぜひ最後までご覧ください!
1.ヨルシカ『修羅』歌詞
あの風 あの風
懐かしいとお前が言った
懐かしい私の心が透けてしまった
山影 晴れ晴れ
風が立った嵐のように
お前が歌うとは知らなかった
忘れたい忘れたい
忘れようと私が言った
忘れた
お前が日差しとは知らなかった
波風 晴れ晴れ
海がたった一つのように
私も一人とは知らなかった
寂しいと歌えば春よ
風を吹く、おれはひとりの修羅なのだ
大きな口を開ける
寂しいとうめく修羅
あなたの心は冷たいと誰かが言った
まぁ!心が冷えるとは知らなかった
夕焼け 晴れ晴れ
風が立った木立のように
お前も一人とは知らなかった
寂しいと私の胸よ裂ける
今、おれはひとりの修羅なのだ
大きな口を開ける
風を受け、走る修羅
寂しいと歌えば春よ
風を吹く、おれはひとりの修羅なのだ
大きな口を開ける
風を吹くおれと修羅
心が 心が波打つとお前が言った
あぁ、心が海だとは知らなかった
山影 晴れ晴れ
風が立った 嵐のように
お前が笑うとは知らなかった
2.ヨルシカ『修羅』歌詞考察
前提知識
歌詞の中でたびたび登場する「春」と「修羅」ですが、宮沢賢治の詩集『春と修羅』が元になっていると考えられます。
・様々な始まりを司り、自然の生命力を象徴する「春」
・仏教の中で死者が生まれ変わる六道のなかでも、いさかいや争いに明け暮れると言われる「阿修羅道」(孤独の象徴)
真逆に位置するふたつを並べた作品になっています。
このヨルシカ『修羅』の中では、生徒、教師、スクールロイヤーのそれぞれが孤独を抱えた象徴としての「修羅」にたとえられており、それぞれの視点で外の世界に目を向け、「春」が抱える膨大な自然の広さや深さに気づかされていく過程を描いています。
2-1.他者との共感
あの風 あの風
懐かしいとお前が言った
懐かしい私の心が透けてしまった
孤独であった修羅は「お前」が「あの風が懐かしい」と言ったことで、自分の心が透かされてしまったと思ったようです。
しかし、これは自分の心が見透かされてのではなく、自分の経験と相手の経験が重なったことによって起きる「共感」です。
ここで初めて、すべての物事において相手と分かり合えないわけではなく、完全な孤独が存在しないことを実感するのです。
2-2.人の行動を裏付ける感性を知る
山影 晴れ晴れ
風が立った嵐のように
お前が歌うとは知らなかった
晴れ晴れとした日、山影が目立つ景色の中で歌う「お前」に意外性を感じています。
自分が何かを感じるように、他人は他人なりに何かを感じ、それをもとに彼なりの行動や表現を起こしているのです。
2-3.忘れたい過去にも生かされている
忘れたい忘れたい
忘れようと私が言った
忘れた
お前が日差しとは知らなかった
主人公が「忘れたい」と嘆くほどの出来事も自分を照らす存在の一つであり、それがなければ今の自分は存在しません。
自分が目を向けたくないものにこそ、目を向けるべきなのかもしれません。
2-4.孤独が故の寂しさ
寂しいと歌えば春よ
風を吹く、おれはひとりの修羅なのだ
大きな口を開ける
寂しいとうめく修羅
寂しいと歌えば心に風が吹き、感情の揺らぎを感じます。
しかし、そんな心の揺らぎの中にいたとしても、自分の孤独の寂しさを分かる人はいないでしょう。
そんなどうしようもなさに、ただ大きな口を開けて寂しさを嘆くことしかできない様子が描かれています。
2-5.冷え切った心と孤独な「お前」
あなたの心は冷たいと誰かが言った
まぁ!心が冷えるとは知らなかった
夕焼け 晴れ晴れ
風が立った木立のように
お前も一人とは知らなかった
「修羅」である主人公は、自分の孤独の中ですっかり拗れてしまい、心が冷え切ってしまったようです。
しかし、それは「お前」も同じで、自分だけの環境、感情の中で孤独に苛まれていたのです。
人にはそれぞれの孤独がありますが、裏を返して孤独なのは自分だけではないという点で言えば、誰もが孤独ではないのかもしれません。
2-6.人の心の奥深さを知る
心が 心が波打つとお前が言った
あぁ、心が海だとは知らなかった
山影 晴れ晴れ
風が立った 嵐のように
お前が笑うとは知らなかった
主人公が風にたとえた心の揺らぎを、「お前」は海に例えて「波打つ」と表現しました。
喜怒哀楽の種類だけではなく、その度合いという奥深さがあったり、自分が培ってきた経験からなる深層心理というものまで、果てしない深さが心にはあります。
ドラマの中ではルールや法律などの理屈では到底拾いきれない悩みや葛藤をどのように反映していくかも論点となっているので、ヨルシカが歌う「心の奥深さ」とは切っても切り離せない関係があります。
3.まとめ
孤独の象徴である「修羅」は、塞ぎ込んだ自分という世界の中から外の世界を見つめ、今一度知らなかったものや自分が無視していたものを見つめ直すことで、一人一人が孤独であり、しかもその孤独はそれぞれの形をしていることに気づきます。
この曲の歌詞全体を通しても「どうせ分かってもらえない」と塞ぎ込むよりも、他人と自分との間に何か分かり合えるものを探そうとする姿勢こそが孤独を寛解させるためのたったひとつの道筋になるのでしょう。