星野源『いきどまり』歌詞考察─「無になる」という死生観─

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みなさんこんにちは!

2025/11/14に星野源の新曲『いきどまり』がリリースされました!

この曲の歌詞では彼自身の死生観が描かれており、希望も絶望もない「無へ帰る」という考え方が節々に散りばめられています。

死に際の主人公は、一体誰にどのような言葉を残して逝くのか。

ぜひ、最後までご覧ください!

目次

1.星野源『いきどまり』歌詞

忘れられぬ
呪いをいま
君にあげる


ただ
忘れないよ
君の温度
下手な
間違いだらけの優しさも

息が止めば
生まれ変わり
君に逢える


ただ
燃えて消えて
居なくなるの
ベタな
雲の上の再会もない

別れが
窓辺を
照らした
鼓動揺れた

戻れないあの日々が
痛みの中から
ただ見つめた寝顔が
瞳の中から
はらはら
海に流れだす
さようなら

寄り添う帰り道で
繋いだ掌
行き止まりの二人を
月だけ見ていた
はらりと
糸は解けゆく
幕は閉じる

忘れられぬ
呪いをいま
君にあげる

持っていくよ
君の笑顔
下手な
間違いながら
それでもくれた
優しさを

2.星野源『いきどまり』歌詞考察

2-1.最愛の君を忘れない

忘れられぬ
呪いをいま
君にあげる


ただ
忘れないよ
君の温度
下手な
間違いだらけの優しさも

死に際の主人公が冗談混じりに「あなたが私を忘れられないように呪いをかけてあげよう」と言うところから始まります。

しかし、実際のところは主人公が最期に与えられるものは何もなく、彼自身は持っていくことしかできません。

その冥土の土産に、ただ君がくれた優しさや思い出を死後の世界に持っていくねという一方通行な約束だけが、彼が死の間際に遺せるものです。

2-2.亡くなれば無に帰る

息が止めば
生まれ変わり
君に逢える


ただ
燃えて消えて
居なくなるの
ベタな
雲の上の再会もない

死んだとしても、また来世で君に会えるという相手を安心させる言葉を呟きはしますが、それが理想であり希望に過ぎないことを正直に吐露します。

死んだら火葬されて灰になり、存在しなくなるだけ。

生まれ変わりもなければ死後の世界もないんだと言い切ります。

この世に残していく最愛の人間を安心させるための言葉がどこかその場しのぎで、身もふたもないような話であるという目も当てられないような事実を、星野源はここであえて描写したのです。

2-3.事切れる瞬間に蘇る想い出

別れが
窓辺を
照らした
鼓動揺れた

戻れないあの日々が
痛みの中から
ただ見つめた寝顔が
瞳の中から
はらはら
海に流れだす
さようなら

とうとう死の瞬間が描かれます。

別れの瞬間に吹いた風がカーテンを揺らし、不安定に鼓動が揺らぎます。

事切れるその瞬間に主人公は、最愛の人と過ごした何気ない日常の景色が涙と共にフラッシュバックしたようです。

2-4.想い出を持ってこの世を去る

寄り添う帰り道で
繋いだ掌
行き止まりの二人を
月だけ見ていた
はらりと
糸は解けゆく
幕は閉じる

始まりを思わせる初々しい「帰り道で寄り添い手を繋いだ想い出」と、終わりを思わせる「行き止まりの2人を月だけが見つめていた」という描写が共存したシーンになっています。

死に際に主人公が走馬灯を観ている瞬間をそのまま言葉に表したような、なんとも不思議な感覚を覚えさせる歌詞になっていますね。

こうして冒頭の約束通り、主人公は最期の最期に「君の温度」や「優しさ」の想い出を持って、この世を去るのです。

3.まとめ

星野源の新曲『いきどまり』は、死に際の主人公の視点から描かれる死生観や死の瞬間を描いた歌詞が印象的でした。

来世があるとか、天国や地獄があるとかではなく「無になる」という感覚。

命は巡らず、死ねば最期”生き止まり”である。

題のひらがなには、そういった意味を含まれていることが今になればわかるかもしれません。

残していく最愛の相手にそれを正直に話すのは大変勇気がいることですし、言わなくてもいいことなのかもしれません。

しかし、下手に死や想い出を脚色しないことこそが一番現実的で、夢を見せずに済むという彼なりの優しさだったのかもしれません。

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