みなさんこんにちは!
2025/2/19にキタニタツヤの新曲『ユーモア』がリリースされました!
この曲は広瀬すずが主演を務める映画『ゆきてかへらぬ』の主題歌になっていて、今注目を集めています。
今回はそんな『ユーモア』の歌詞の意味を考察していきたいと思います!
ぜひ最後までお付き合いください!
1.キタニタツヤ『ユーモア』歌詞
乾いた空に雨雲が
押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
きみのおどけた声がききたい
ぬるい陽だまりをひとりで歩いて
飼い慣らせないままのさびしさがある
強い風の日の急ぎ足の雲に追いつくように
きみは走り去った
波の音が永遠に響く海
歌うように跳ねる砂が足を舐める
乾いた空に雨雲が
押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
きみのおどけた声がききたい
やさしいユーモアをもっと教えて
くだらないジョークをいくつもまじえて
悲しい話をうまいことごまかす
散らかる心の部屋を片付けて
余白を生むようにきみの詩は在った
僕たちは永遠でいられない
それでも言葉の残響は名残る
束ねた花に煩いがほどけていくように
きみから見た世界は柔らかい
ゆるむ頬で真似してうたう
抱きしめあえない星座たち
夜の隔たりの距離を詩は渡っていく
乾いた空に雨雲が押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
冷蔵庫の音がうるさい
きみのおどけた声はもうきけない
きみのユーモアを覚えておこう
2.キタニタツヤ『ユーモア』歌詞考察
『ユーモア』は、ジャケットに記載されている英題が “Humor” ではなく “You More” と表記されている点がとても興味深いです。
「ユーモア(Humor)」が持つ「人を和ませるような上品さのある笑いを誘うシャレ」という意味に加え、「You More」という言葉には「あなたをもっと」というニュアンスが感じられます。
このタイトルの二重の意味を意識しながら、一節ずつ考察していきましょう。
2-1.押し寄せる別れの悲しみ
乾いた空に雨雲が
押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
きみのおどけた声がききたい
この曲の歌い出しは「乾いた空に雨雲が押し寄せる」という比喩から始まります。
乾いた空は「感情の枯渇」や「孤独」を、雨雲は「悲しみ」や「涙」を象徴していると考えられます。
「涙があふれそうになる夜」と続くことで、主人公が感情の高まりを抑えきれなくなっている様子が伝わってきます。
そんな時、「きみのおどけた声がききたい」と願うことで、喪失感や寂しさの中にいることが強調されています。
ここでいう「きみ」は、ユーモアで悲しみを和らげてくれる存在だったのかもしれません。
2-2.埋まらない心
ぬるい陽だまりをひとりで歩いて
飼い慣らせないままのさびしさがある
強い風の日の急ぎ足の雲に追いつくように
きみは走り去った
「ぬるい陽だまり」という表現が印象的です。暖かさを感じる言葉ではありますが、「ぬるい」と表現されていることで、どこか満たされない心情が匂わされているように思えます。
「ひとりで歩いて」という描写もそこに加わり、寂しさが際立っています。
「飼い慣らせないままのさびしさ」というフレーズからは、主人公がずっと孤独を抱え、それをどうにかしようとしても自分ではうまくできなかったことが読み取れます。
「強い風の日の急ぎ足の雲に追いつくように きみは走り去った」という比喩は、相手が突然いなくなったことを表しているようです。
まるで風に流される雲のように、「きみ」は遠くへ行ってしまったのでしょう。
2-3.永遠に響く「音」
波の音が永遠に響く海
歌うように跳ねる砂が足を舐める
1人で歩いて向かった先は海だったようです。
「波の音が永遠に響く海」という表現には、時間の流れや過去の記憶が持続しているような印象を受けます。
「歌うように跳ねる砂」という描写は、穏やかで心地よいイメージを喚起させますが、その一方で、どこか儚さや過ぎ去っていくものへの寂しさも感じさせます。
2-4.「きみ」がくれたユーモアを思い出す
乾いた空に雨雲が
押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
きみのおどけた声がききたい
やさしいユーモアをもっと教えて
冒頭の歌詞が繰り返されながら、最後に「やさしいユーモアをもっと教えて」というフレーズが加わっています。
これは、単なる「おどけた声」ではなく、その人が持っていた「ユーモア」そのものを求めているように感じられます。
ユーモアとは、ただの冗談ではなく、相手が辛い現実を乗り越えるための優しさでもあります。
尾を引く喪失感や辛さが和むようなユーモアを、はたまたユーモアをくれる彼女そのものをいまだに欲しているのかも知れません。
2-5.去り際にもユーモアを
くだらないジョークをいくつもまじえて
悲しい話をうまいことごまかす
散らかる心の部屋を片付けて
余白を生むようにきみの詩は在った
「くだらないジョークをいくつもまじえて 悲しい話をうまいことごまかす」という一節は、まさに「ユーモア」の本質を示しているように思えます。
単なる笑いではなく、悲しみや苦しみを和らげるためのユーモアが描かれています。
「散らかる心の部屋を片付けて 余白を生むようにきみの詩は在った」という表現は、「きみ」が主人公にとって心の整理を助ける存在だったことを示しているようです。
「余白を生むように君の詩はあった」という部分では、心にぽっかりと空いた穴に「きみ」がいることを比喩的に表現していますね。
2-6.「言葉」は「時」を超える
僕たちは永遠でいられない
それでも言葉の残響は名残る
この一節では、「永遠ではいられない」という言葉がストレートに述べられています。
「きみ」との関係が続かなかったことを受け入れながらも、残された「言葉の残響」だけが心の中に生き続けていることを示しています。
「残響」という表現が繊細で、声や言葉が時間とともに消えていく様子を想像させます。
しかし完全には消えずに「名残る」とされている点に、喪失感と同時に、思い出が確かに存在し続けるという前向きな意味合いもわずかながら感じられます。
2-7.彼女が自分にのこしてくれたもの
束ねた花に煩いがほどけていくように
きみから見た世界は柔らかい
ゆるむ頬で真似してうたう
「束ねた花」という言葉には、何かを大切に抱えるようなイメージがあります。
花は感情や記憶を象徴しているのかもしれません。
「煩いがほどけていくように」という表現からは、悩みや苦しみが和らいでいく感覚が伝わってきます。
「きみから見た世界は柔らかい」というフレーズは、「きみ」が世界を優しく、穏やかな視点で捉えていたことを示しているようです。
そのような視点を持っていたからこそ、残響として名残るようなユーモアを与えられたのでしょう。
主人公はその世界観に憧れ、少しでも近づこうとして「ゆるむ頬で真似してうたう」と続きます。
ここでは、無理のない、自然な形で「きみ」の在り方を受け継ごうとしているように感じられます。
2-8.「言葉」は「距離」を超える
抱きしめあえない星座たち
夜の隔たりの距離を詩は渡っていく
「抱きしめあえない星座たち」という表現は、遠く離れていても関係性が存在し続けることを示しているようです。
星座は、それぞれの星が距離を隔てながらもつながりを持っていることから、「きみ」との関係が物理的には離れてしまっても、何かしらの形で続いていることを示唆しているのかもしれません。
「夜の隔たりの距離を詩は渡っていく」という一節は、「詩」という言葉の残響こそがその二人をつなぐ橋のような存在であることを表しているように感じられます。
もしかすると、遠くへ行ってしまった「きみ」が残した言葉や詩は、「時」と「距離」のどちらをも超越し、支えになっているのではないでしょうか。
2-9.「僕」の心にもユーモアを
乾いた空に雨雲が押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
冷蔵庫の音がうるさい
きみのおどけた声はもうきけない
きみのユーモアを覚えておこう
最後のサビでは、「冷蔵庫の音がうるさい」という具体的な描写が加わり、一気に現実に引き戻されるような感覚を与えます。
それまでの詩的な表現とは異なり、日常の静けさの中で「きみ」がいないことを痛感していることが伝わってきます。
「きみのおどけた声はもうきけない」と、これまで願っていた「きみの声」がもう二度と聞けないことがはっきりと示されます。
しかし、最後の一節「きみのユーモアを覚えておこう」によって、主人公が「きみ」のユーモアやその在り方を心に刻み、受け継いでいこうと決意していることが感じられます。
まとめ
この『ユーモア』という曲は、単なる別れの悲しみではなく、「きみ」が残した「言葉」を大切にしながら生きていくことを描いているのではないでしょうか。
タイトルの “You More” という英題には、「きみのことをもっと思い出す」「きみの在り方をもっと受け継いでいく」という意味が込められているように感じられます。
全体を通して、『ユーモア』は喪失と共に残るもの、そしてユーモアというものの本質を描いた楽曲だと考えられます。
「ユーモア」とは単なる冗談ではなく、悲しみを包み込む優しさであり、それを受け継いでいくことが主人公にとっての前進なのかもしれません。