サカナクション『怪獣』歌詞考察─怪獣として虐げられても信念を貫く姿

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みなさんこんにちは!

2025/2/20より、サカナクションの新曲『怪獣』がリリースされました。

サカナクションの新曲としては約3年ぶりのリリースとなる『怪獣』

この曲は今絶賛放送中のアニメ『チ。-地球の運動について-』のOPテーマとなっており、歌詞からサウンドの全てが『チ。』のシリアスな作風に合っていると話題です。

サカナクションのボーカルである山口一郎さんが鬱病と闘いながら2年の構想を経て完成させた『怪獣』は果たしてどんな曲に仕上がっているのでしょうか?

当記事ではそんなサカナクションの新曲『怪獣』の歌詞を一節ずつ、アニメと山口一郎さんの視点を踏まえながら考察していきます!

ぜひ最後までお付き合いください!

目次

1.サカナクション『怪獣』歌詞

何度でも

何度でも叫ぶ

この暗い夜の怪獣になっても

ここに残しておきたいんだよ

この秘密を

だんだん食べる

赤と青の星々

未来から過去

順々に食べる

何十回も噛み潰し

溶けたなら飲もう

淡々と知る

知ればまた溢れ落ちる

昨日までの本当

順々と知る

何十螺旋の知恵の輪

解けるまで行こう

丘の上で星を見ると感じる

この寂しさも

朝焼けで手が染まる頃には

もう忘れてるんだ

この世界は好都合に未完成

だから知りたいんだ

でも怪獣みたいに

遠く遠く叫んでも

また消えてしまうんだ

だからきっと何度でも見る

この暗い夜の空を何千回も

君に話しておきたいんだよ

この知識を

淡々と散る

散ればまた次の実

花びらは過去

単純に生きる

懐柔された土と木

ひそひそと咲こう

点と線の延長線上を辿るこの淋しさも

暗がりで目が慣れる頃には

もう忘れてるんだ

この世界は好都合に未完成

僕は知りたいんだ

だから怪獣みたいに

遠くへ遠くへ叫んで

ただ消えていくんだ

でも この未来は好都合に光ってる

だから進むんだ

今何光年も遠く遠く遠く叫んで

また怪獣になるんだ

2.歌詞考察

この曲『怪獣』は、アニメ『チ。』の世界観と、山口一郎さん自身の人生が交差するように描かれています。

『チ。』に登場する地動説を追い求める者たちの孤独と覚悟、そしてアーティストとして独自の道を突き進む山口さんの姿が、歌詞に色濃く投影されています。

以下、各節ごとに考察していきます。

2-1.マイノリティとしての生き様を刻む

何度でも

何度でも叫ぶ

この暗い夜の怪獣になっても

ここに残しておきたいんだよ

この秘密を

冒頭では、「秘密を叫ぶ怪獣」の姿が描かれています。

「暗い夜の怪獣」という比喩は、理解されない者・異端者としての姿を象徴していると考えられます。

『チ。』の登場人物たちが真理を追い求めながらも異端者として迫害される姿と、アーティストとしてマイノリティな道を進む中、山口さん自身が鬱を乗り越え、自分の音楽を作り続ける姿が重なります。

「秘密」とは、真理や知識、アニメでいう地動説を指していると考えられます。

2-2.知識や思想の継承、表現

だんだん食べる

赤と青の星々

未来から過去

順々に食べる

何十回も噛み潰し

溶けたなら飲もう

「赤と青の星々」は、天文学や宇宙の知識を指しています。

『チ。』に登場する地動説に魅了された者たちは、星の動きを観察し、そこから新たな真理を見出しました。

「未来から過去 順々に食べる」という表現は、過去と未来の知識を積み重ねていく様子を示しており、『チ。』の見どころともなっている世代間の知識の継承や進化を表していると考えられます。

「何十回も噛み潰し 溶けたなら飲もう」は、得た知識を自分の中に取り込み、理解しようとする姿勢を描いているように感じられます。

2-3.塗り替えられていく知や価値観

淡々と知る

知ればまた溢れ落ちる

昨日までの本当

順々と知る

何十螺旋の知恵の輪

解けるまで行こう

知識を得るたびに、新たな疑問が生まれる無限の探求心が表現されているように感じられます。

「昨日までの本当」という言葉からは、絶対的な真理だと思っていたことが、新たな知識によって塗り替えられる様子(パラダイムシフト)をさしているのでしょう。

「何十螺旋の知恵の輪」では、同じ場所に積み重なり、辿りながらも上昇していく螺旋という形を知の発展に投影しています。

昔の研究を踏まえながら、つまり、時には肯定したり、否定したりしながら発展していく様を示しており、終わりのない学びの過程を表していると考えられます。

2-4.異端である孤独感とその受容

丘の上で星を見ると感じる

この寂しさも

朝焼けで手が染まる頃には

もう忘れてるんだ

夜空を見上げたときの「寂しさ」は、宇宙の広がりや、自分の存在の小ささを実感することによるものかもしれません。

また、星のように生き方が存在する社会の中で「丘の上から星(社会)を観察する」アーティストという立場を選んだ山口さんの孤独感を指しているともとれます。

しかし、「朝焼けで手が染まる頃には もう忘れてるんだ」とあるように、その孤独や不安は、時間とともに消えていくのだと考えられます。

異端者というレッテルを貼られながらも知的探求を進める過程には孤独がつきものですが、それでも探求者たちは前に進むということを示しているようです。

2-5.「知りたい」、ただそれだけに突き動かされる

この世界は好都合に未完成

だから知りたいんだ

でも怪獣みたいに

遠く遠く叫んでも

また消えてしまうんだ

「この世界は好都合に未完成」という表現は、世の中が完全なものではないからこそ、探求する価値や余地があるという意味だと考えられます。

完全なる真理を知りたいという知的欲求だけに背中を押される『チ。』の登場人物とも重なります。

しかし、「怪獣みたいに 遠く遠く叫んでも また消えてしまう」とあるように、自分が何かを伝えようとしても、異端であるその生き方が受け入れられるとは限らないという現実も示唆されています。

研究者が迫害され、時にはその功績が歴史の闇に埋もれてしまうこととも重なるように感じられます。

2-6.研究し、あるいは歌い、繋いでいく

だからきっと何度でも見る

この暗い夜の空を何千回も

君に話しておきたいんだよ

この知識を

「何度でも見る」という言葉には、諦めずに真理や自分だけの生き方を追い求める姿勢が表れています。

自分が消えてしまおうとも、真理への道を次世代に繋いでいくことに意味があるという意志が感じられます。

これは、『チ。』の登場人物が命をかけて地動説を後世に伝えようとしたこと、また山口さんがアーティストとして、オーディエンスに向けて音楽を作り続けることにも通じています。

2-7.他者が信念を曲げることはできない

淡々と散る

散ればまた次の実

花びらは過去

単純に生きる

懐柔された土と木

ひそひそと咲こう

「散る」「次の実」「花びらは過去」という表現からは、知識や思想が一つの世代で終わるのではなく、次の世代へ受け継がれていく様子が読み取れます。

地動説を信じた者たちが自らの研究を託しながら受け継いでいったように、知識や思想は人から人へと繋がれていくのだと考えられます。

「懐柔」とは手懐けられるという意味であり、『チ。』的に言えばC教の思想弾圧、アーティスト的視点から言えば一元的な生き方を推奨しようとする社会を指していると考えられます。

「ひそひそと咲こう」という表現は、懐柔を推し進める社会の中で自らの信念を表立って言えない環境でも、密かに貫くことを指しているように感じられます。

2-8. 異端である孤独感とその受容#2

点と線の延長線上を辿るこの淋しさも

暗がりで目が慣れる頃には

もう忘れてるんだ

ここでも「孤独」や「淋しさ」が描かれています。

探求の道は孤独で、理解されないことも多いですが、それに慣れ、やがて忘れてしまうという感情の移ろいが表現されているように感じられます。

2-9.「異端研究」「表現する」という自分の信念を遺す生き方

この世界は好都合に未完成

僕は知りたいんだ

だから怪獣みたいに

遠くへ遠くへ叫んで

ただ消えていくんだ

再び「未完成」という言葉が出てきます。未完成だからこそ知りたい。

しかし、どれだけ叫んでも、最終的には自分も消えてしまう。

研究者が命をかけても、その成果がすぐには認められないこととも重なるように感じられます。

山口さん自身も、自分の音楽が受け入れられるかどうかわからない中で、表現し続けることの儚さを感じているのかもしれません。

2-10.表現を続けていく決意

でも この未来は好都合に光ってる

だから進むんだ

今何光年も遠く遠く遠く叫んで

また怪獣になるんだ

ここで「未来」に希望が見出されています。「好都合に光ってる」という言葉には、先のサビで言われていたように、世界が未完成であるがゆえに、まだ可能性があるというポジティブな意味が込められています。

「また怪獣になるんだ」と繰り返されることで、たとえ異端者として扱われようとも、知的探求や表現を続けていく決意が表れています。

3.まとめ

『怪獣』の歌詞には、地動説を追い求めた者たちの孤独と覚悟、そしてアーティストとしての山口さんの生き様が交差する形で描かれています。

まさに、『チ。』の登場人物の生き様と山口さん自身の人生観が融合した楽曲といえるでしょう。

山口さんがYouTubeライブで相談を受けた時によく言っている言葉として、「選択肢を縛られるな」「なりたい自分になれ」というのがあります。

この言葉には、彼がアーティストとして踏み出した日から、鬱病と闘いながらもサカナクションとしての活動を大々的に再開するきっかけとなったこの『怪獣』という大曲の完成に至る今日までの生き様が詰まっていると思います。

みなさんは、どのように感じましたか?

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