今年も夏が近くなってきましたが、皆様はいかがお過ごしですか?
夏といえば海や川、かき氷などが連想されると思いますが、やっぱり夏と言えば怪談ですよね。
暑い夏に怪談話を聞くと一気に涼しくなりますし、ある種夏の風物詩とも言えますよね。
ですが、なぜ夏=怪談という文化になったのでしょうか?
海外ではハロウィンなんかは10月ですし、8月の暑い時期に怖い話や心霊の風習があるのは日本ならではだと感じたので、今回の記事で夏の怪談の起源や夏に聞く理由などを諸々ご紹介していきます。
期限やルーツを知っておくとさらに楽しくなるので、ぜひ最後まで読んでみてください!
1. なぜ夏に怪談話をするのか
早速本題ですが、ではなぜ夏に怖い話をするのでしょうか?
1番大きいのはやはり、「お盆」があるからですね。
ちなみにお盆の時期になるときゅうりとナスに足をつけて飾っている光景を、日本人なら誰もがテレビや何かしらで一度は目にしたことがあるかもしれません。
あれはきゅうりの方が馬、ナスの方が牛に見立ててあるんです。
きゅうりで作られる馬の方は足が速いことから、亡くなった人や先祖の魂が早く帰って来れるように。
ナスでできた牛の方は、先祖の霊がゆっくりと帰れるようにという意味があります。
つまり夏はお盆に死者の魂が帰ってくる季節だからです。
そして帰ってくる魂には友好的な先祖の霊のみならず、この世に恨みや苦しみを抱いた怨霊も含まれるため、幽霊による実害が及びやすいと考えられていて、怪談のリアリティがより増してくるのです。
そのリアリティの増した怖さと言うのは、恐怖からの寒気、清涼感を与えますから、暑い夏を凌ぐためという意味合いもあります。
またそれだけではなく、日本に昔から伝わる怪談には、水辺や山など、涼しさや夏らしさを感じられる自然描写も多く、季節感の風流を嗜むという要素も少なからずあるようですね。
2. 怖い話を聞くとなぜ涼しくなるのか?
先にも触れましたが、怖い話を聞いた時に寒気だったり清涼感を感じることがありますよね。
あれって実はただの勘違いではなくて、しっかりと身体のメカニズムが関係しているんです!
人間の身体的仕組みによって、恐怖を感じると交感神経が刺激されます。交感神経が刺激されると、心臓の血管が拡張されて血圧が上がり、ドキドキし始めます。
一方その時に皮膚表層の血管は収縮するので、血流が悪くなり冷たくなります。
これがあの寒気の正体なんです。
まさかあの寒気にそんなメカニズムが隠れていたとは、衝撃ですよね!
3. 夏にホラー映画が人気な理由
1.涼しむため
やはり1番はこれでしょう!
怖い映画は暑い夏にはピッタリなんです。
映画館で観る場合にも室内ですから、恐怖のみならず空間としても暑さを凌いで滞在できるのも強みです。(とは言っても怖いしリラックスなんかは到底できないけど…)
2.夏に公開されるホラー映画が多い
江戸時代の夏の怪談ブームに始まり、日本の文化的な側面には「夏は怪談」という意識や概念が根強くあります。
これにより日本では夏にホラー映画が多く公開されたり、ホラー映画の特集を組まれたりします。
こういった周りの環境もあって、夏の空気感の中に「ホラー映画」がしっかりと組み込まれていますよね。
3.「禁止・非推奨」を巧みに利用した「心理的反発」をうむ映画広告
「見てはいけない」「1人ではお勧めしません」など、禁止や非推奨を全面に出された広告は、視聴者に心理的な反発を誘い込みます。
これを臨床心理学では「心理的リアクタンス」と呼びますが、まさしくこれを利用することで、私たちの恐怖と裏腹に「観たい」という強い欲求を掻き立てるのです。
4. 絶対に見てはいけない定番の夏の怪談話
それではここで、昔から定番とされている怪談話のタイトルをいくつかご紹介します。
本記事では中身にまでは触れませんので、もしも興味が湧いたらご自分で検索してみてください。
ただし、一人で見るのはお勧めしません。
昔からの怪談
『皿屋敷』
『耳なし芳一』
『ろくろ首』
学校の怪談
『トイレの花子さん』
『赤マント』
『作曲家の肖像画』
5. 怪談の歴史と文化
怪談そのものの歴史は大昔の平安時代まで遡ります。
822年頃に成立した日本最古の説話集と言われる『日本霊異記』には、仏教説話として因果応報を説くものが主に記されていて、その中には怪異による怪奇現象などが多く含まれています。
恐らく形を成した最古の怪談は、この『日本霊異記』ということになるでしょう。
平安時代にはその後も、怪談を多数収録した『今昔物語』(1120年頃)を中心に多くの怪談が誕生しました。
江戸時代には、平安時代に多く現れた怪談をひとつにまとめた書物として、『雨月物語』(1776年)が残っています。
またこの頃には、日本三大怪談と言われる歌舞伎芸としての『四谷怪談』、『番町皿屋敷』、そして、落語芸として『牡丹灯籠』が生まれました。
明治時代末期には、当時欧米で流行していたスピリチュアリズム(心霊主義)に影響を受け、日本にも「怪談ブーム」が到来しました。明治時代は文学が盛んでしたから、そこに怪談ブームが乗っかり、怪談を題材にした文学も多く執筆されました。
そこから少し飛んで、1970年代にはヒッピー文化や未確認生命体(UMA)の流行が欧米から押し寄せ、日本でも多くの心霊番組が放映されて、第二次とも呼べる大規模な怪談ブームが起きました。
貿易の解禁や戦争といった政治的な側面から生まれた他国との繋がりが、日本の文化と混ざり合って、日本の怪談文化も複雑に形を変えていったんですね。
6. 夏の怪談の起源
事実、私たちは「夏といえば怪談!」といった概念が当たり前に定着していますが、これの始まりっていつだったんでしょうか?
これは、江戸時代に歌舞伎の「涼み芝居」として恐ろしい怪談話をしたことがきっかけであると言われています。
先に紹介した『四谷怪談』や『番町皿屋敷』の公演がこれに当たりますね。
更に言うとその涼み芝居は、農村部の民俗芸能である「盆狂言」からきていると言われていて、鎮魂の意味を込めて霊の無念などを語り聞かせるものだったようです。
江戸時代と言うと1600年以降のことですから、昔のようでもありますが、比較的最近にも感じられますね。
この夏の怪談文化が400年も続いている…。もしくは400年しか続いていない…。どちらにも取れるような気がします。
7. 怪談とホラーの違い
では、怪談とホラーの違いって一体なんなのでしょうか?
「怪談」を英訳すれば“Ghost Story”
“Horror”を日本語に訳せば「恐怖」です。これは「何らかの怪異に襲われる恐怖」ととれますね。
言葉ヅラだけをとると、二つが指すものには特別大きな違いはないんですよね。
ただ、この2つの語句が含む空気感の中に少し違いがあるかもしれません。
1.「怪談」は口述的、「ホラー」は視覚的
まず大きな違いとして、「怪談」と言うと、ほとんどは登場人物の会話や書物に記されたものを指します。
「ホラー」と言うと「ホラー映画」のように、視覚化された映像を中心とした恐怖体験を指します。
怪談話を聞いて自身の頭で想像することで、より情景が事細かに脳内に入り込んでくるんですよね。
かといってホラー映画のように映像化された上で、幽霊や怪異の実体が人を襲うシーンが流れるのも怖いですよね。
2.文化や生活に根ざしているか否か
「怪談」と言うと、日本では伝統芸能などの文化的な側面を含んだ話が多いです。
登場する幽霊に古くから言い伝えられている伝承が絡んでくるのは、日本の「怪談」と呼ばれる話に広く通ずるものです。
一方の「ホラー」と言うと、その映画の舞台となる時代の側面だけを映していたり、時代背景が曖昧だったりします。登場人物を追い込む怪異が突如として現れたものであるなど、その原因があまり深掘りされなかったり、比較的直近で起きた事故が原因であることが多いです。
3.実体を持って直接襲ってくるか否か
「怪談」に登場する幽霊は、心象世界を中心とした実体のないものであることもしばしば。
幻覚や幻聴、得体の知れない超常現象などを駆使した精神攻撃を利用して、登場人物や私たちを恐怖に陥れてきます。
「ホラー」と称される作品に登場する怪異は、実体を持った病人や人形などの直接的に襲ってくるものが多いです。刃物を持って登場人物を追いかけ回されるような、アグレッシブな恐怖を与えてくるものが主流です。
この2つの間に明確な区分があるわけではないのですが、よくよく考えてみたらニュアンス的な意味では使い分けが成されていますよね。
現代の怪談エンターテインメント
日本の文化に基づく怪談は、江戸時代は歌舞伎、昭和は「学校の七不思議」などの噂話(都市伝説に近い)を中心として広まってきました。
では現代の怪談の形はどんなものになっているのでしょうか?
テレビで放送される「視聴者の恐怖実体験」を元にした短編ドラマ番組なども、歴史的に見れば目新しいものに分類されますが、今はまた更に一風変わってきているかもしれません。
「若者のテレビ離れ」と言うように、携帯を中心としたコンテンツ配信が台頭しています。したがって、ここ最近の主流はSNSを利用した「超短編怪談」であるとも言えるでしょう。
YouTubeやInstagramのショート動画には数多くのコンテンツが投稿されていますが、その中にも怪談的なジャンルが存在します。
30〜60秒程度の恐怖体験や創作などを中心とした怪談は、皆さんも見かけたことがあるのではないでしょうか?
ライターの私がそのなかでも好きなのは、「意味がわかると怖い話」ですね。
一見してみると普通だったりするんですが、一点の気になるところから紐解いていくと、その話の裏に隠された恐ろしい真意が徐々に明らかになってくる…かなり趣向が凝らされていて面白い要素ですよね。
ホラージャンルを扱うチャンネルがそれぞれでまた更に趣向を凝らし合っていて、たとえ個人が運営しているチャンネルであっても見応えがあるものが多いです。
片手間に恐怖体験ができる現代は、怪談好きにはたまらない時代なのかもしれませんね。
8. 怖い話を聞くメリットと効果
怖い話を聞くことには、意外にもいくつかのメリットがあります。
科学的にも証明されたものもありますから、いくつかご紹介しますね。
1.「良いストレス」につながる
「良いストレスってなんだ?」とお思いの方もいるかもしれませんが、ホラー映画のように自ら選択して向かい合うようなストレス=「管理可能なストレス」には、利点があることが過去の研究で明らかになっています。
この管理可能なストレスは免疫反応を引き起こし、それによる免疫系の強化が見込めるのです。
2. 科学的にも「幸福感・達成感」を得られる
科学的に証明された結論として、怖い話を聞いたりホラー映画を見ることは脳に刺激を与えるため、一時的にアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質や、多量のホルモンの分泌を促します。
これにより幸福感や達成感、集中力や覚醒状態を得ることができるのです。
3.「知識・教養」が身につく
ホラー映画もそうですが、日本の昔ながらの怪談が特に色濃く映し出しているのが、その話の題材となっている時代の「文化・価値観」などです。
たとえ幽霊自体がフィクションだったとしても、その舞台は実際の舞台に即していることが常です。
ホラー映画などはファッション文化などの視覚的教養も得られますし、実際私自身も過去のホラー作品からインスピレーションを受けることが多々あります。
話の中の「文化」のみならず、歌舞伎座に涼み芝居を見に行くとなれば「歌舞伎」自体に対する造詣も深まりますし、見方によっては「怖い話」の中からも、深みのある文化や教養を汲み取ることができますね。
9. まとめ
いかがでしたでしょうか?
・夏に怪談話をするのは「お盆」があるから!
・怪談は平安時代初期に生まれた!
・「夏の怪談」は江戸時代から続いている!
・怪談は「幸福感や免疫向上」につながる!
「夏の怪談」って、当たり前に私たちの文化感や観念に刷り込まれていますが、意外と知られていない歴史だったり、身体に及ぶ影響まで奥深いものが沢山ありましたよね。
怪談についてですが、作品そのものについてはあまり触れられませんでしたから、当ページでは触れきれなかったところで深さをまだまだ秘めているのかもしれませんね…。
SNS時代になって怪談の内容にもスマホやリモートなどのニューテクが組み込まれていくようになりましたが…
私は今年の夏は子供心を思い出して、学校の怪談なんかを聞いて見ることにします…笑
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