【歌詞考察】マカロニえんぴつ『静かな海』─上手くいかない人間らしさ─

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みなさんこんにちは!

2025/6/15にマカロニえんぴつの新曲『静かな海』がリリースされました。

この曲はノンタイアップ曲となっており、マカロニえんぴつがノンタイアップ曲をシングルでリリースするのは2022年の『なんでもないよ』ぶりとなります。

『静かな海』は人生でぶつかるすれ違いや後悔を取り上げ、”不完全という人間らしさ”を描いた曲になっています。

当記事では『静かな海』の歌詞を一説ずつ区切り、細かく考察していきたいと思います。

ぜひ最後までご覧ください!

目次

1.マカロニえんぴつ『静かな海』歌詞

心はそのまんま伝わらないから
ことばの仕事が増えるばかりだ
「わかってないよな、お前ってやつは」
って分かってやれんのは、
おれだけだね
なんてな
恋の数ばかり数えていたら
愛の形が見えなくなったよ
わかっちゃいたけど、
わかっちゃいたけど
救ってくれるのは
あなただけだった
変わっちゃいないのさ、
なんにもなぁにも
乱暴の先に花は咲かなくて
聞こえていた音も、
だいぶ前に消えた
いったいどこで間違えたんだっけ?
なぁ、いかないでよ
愛するひとよ
飾らない今日の命でいよう
くたびれた時代の真ん中
戻らないように
立っている静かな海
眠らない欲を蒔いて行こう
焼き回した時代の最中で
沈まないように
待っていた静かな海
心を覗いてシラけるより
ことばのシワだけ増やしてゆけ
「わかってたんだよな、お前はいつも」
って分かってやれんのは、
おれだけだね
なんてな。

2.マカロニえんぴつ『静かな海』歌詞考察

2-1.伝わらない心と言葉の仕事

心はそのまんま伝わらないから
ことばの仕事が増えるばかりだ
「わかってないよな、お前ってやつは」
って分かってやれんのは、
おれだけだね
なんてな

気持ちはそのままでは届かない。

だから人は言葉を尽くすけれど、それでも誤解やすれ違いは生まれます。

「分かってやれるのは俺だけだ」という自負には、皮肉まじりの照れや無力感がにじんでいます。

最後の「なんてな」が、それを相手に伝えることを諦めたようで、むしろ深い孤独を示しているとも読めます。

2-2.恋と愛のすれ違い

恋の数ばかり数えていたら
愛の形が見えなくなったよ
わかっちゃいたけど、
わかっちゃいたけど
救ってくれるのは
あなただけだった
変わっちゃいないのさ、
なんにもなぁにも

“恋”という表面的な関係や出来事ばかりを追っていた結果、大切な“愛”の本質を見失ってしまったことへの後悔が語られます。

「わかっちゃいたけど」というフレーズからは、自分の未熟さを認めつつも止められなかった感情がにじんでいます。

そして結局は「あなただけ」だったと気づいたときには、もう何も変わらない現実だけが残っている。

静かで痛烈な後悔と自己認識の瞬間です。

2-3.後戻りできない別れの兆し

乱暴の先に花は咲かなくて
聞こえていた音も、
だいぶ前に消えた
いったいどこで
間違えたんだっけ?
なぁ、いかないでよ
愛するひとよ

ぶつかり合いばかりの関係に、結末が見えはじめた様子が描かれています。

「音が消えた」という比喩では、会話やつながりが失われたことを表しており、過去を振り返っても原因がもうはっきりとは分からない。

けれど、どうしようもなく「いかないで」と縋るそのやるせない一言が胸を打ちます。

未練と愛情、悔しさが混ざり合った情景です。

2-4.静かな海に立つ覚悟

飾らない今日の命でいよう
くたびれた時代の真ん中
戻らないように
立っている静かな海
眠らない欲を蒔いて行こう
焼き回した時代の最中で
沈まないように
待っていた静かな海

この部分は、全体の中でもっとも抽象度が高く、そして象徴的になっていますね。

「静かな海」とは、傷ついた心の安らぎや希望、あるいは未来そのものの喩えかもしれません。

とにかく、この他で出てくる「乱暴」などといった、波乱のすれ違いや時代を表すフレーズたちとは真逆の意味で立てられた言葉であるのは間違いありません。

「くたびれた時代」「焼き回した時代」=繰り返される疲弊した社会や人間関係の中で、それでも“飾らない自分”で、“欲”や“情熱”を手放さずに立ち続けようとする決意が込められています。

過去には戻らず、沈まず、立ち続ける…その姿勢がこの曲の核となっています。

2-5.ことばのシワと真実

心を覗いてシラけるより
ことばのシワだけ増やしてゆけ
「わかってたんだよな、お前はいつも」
って分かってやれんのは、
おれだけだね
なんてな。

相手の心を見透かそうとして“しらける”よりも、ことばを交わし続けて、たとえそれが不器用でも、丁寧に積み重ねていくほうが大切だと語っています。

ここでも再び出てくる「おれだけだね、なんてな」は、強がりと本音が入り混じる、マカロニえんぴつらしい“にんげんくささ”の表現なのかもしれません。

本当にわかり合えるかどうかはわからない。

でも、わかろうとした時間が確かにあったという証として、ことばを交わし続ける意味を肯定しています。

3.まとめ

「静かな海」は、人生でのすれ違い(言葉と感情のすれ違い、恋と愛の境界線、そして立ち尽くす個人の姿)を、淡々としたトーンで描いた楽曲でした。

“わかりたいけどわかれない”、“気づいていたのに気づかないふりをしていた”、“戻りたくても戻れない”といった葛藤を通じて、それでも「沈まないように」「立ち続ける」ことを選んだ一人の人間の姿が浮かび上がります。

飾らない、そして不完全な人間らしさが全編にわたって滲んでおり、心の深い部分に静かに、そしてじわじわと響く歌詞になっています。

ことばではうまく伝えきれない想いを、それでもことばにしようとする…。

そんな切実さがこの曲のすべてと言えるでしょう。

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