【歌詞考察】大森元貴『絵画』──あなただけでも私を覚えていて

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みなさんこんにちは!

2025/5/28に、大森元貴ソロ曲としては実に4年ぶりとなる新曲『絵画』がリリースされました!

Mrs. GREEN APPLEの大森元貴とはまた違う、本当は根暗で歪んだ自分を繊細な表現で書いてみようとする姿勢が印象的です…。

か細く高い歌声が切なさを醸していますが、歌詞はどのようなメッセージを含んでいるのでしょうか。

今回はその歌詞を一節ずつ区切りながらひとつずつ考察していきたいと思います!

目次

1.大森元貴『絵画』歌詞

震わせて
来る
狂わせて
捨てる
難儀に


羽ばたかせ
千切れる
もぐ
艶美に


響くは街に
また残酷に
禊の様に
洗う様に

夢なら覚める頃
孤独にも慣れた
あぁ また嘘をついた
誰にもバレないように
抱きしめてと
洩れないように

散らかった思考の渦に
呑まれそうな私を最期まで愛してほしい
飾られる様な絵画にはなれなくても
私にしか無い色で描いてほしい
せめて私のためだけに
描いてほしい

震わせて
来る
狂わせて
捨てる
ページに


咲くことも
知らずに散る
フェミニン

誰にもバレないように
悲しませて
歓ばせてよ

散らばった理想の海に
溺れる様な私を
最期までポイして欲しい
鮮やかに映す
レンズには傷が目立つけど
私にしか無い理由で
縋っていて欲しい
せめて私のためだけに
歌っていて欲しい

誰かのせいに
誰かのせいにして
生きてゆけたら
楽なんだろうな

辛かった非凡と鬱に
呑まれていた
私の海岸を歩いてほしい
見せられぬ程
だらしない今日に明日に
私にしか無い色で描いてほしい
せめて貴方の部屋に
その絵画を飾ってほしい

虚しさが残る
血管を泳ぐ
不安のループに踊る
私を許して

虚しさが残る
血管を泳ぐ
不安のループに踊る
私を許して

また鐘が鳴る
冷えた部屋に残る
私の影を
貴方は探してくれる?

私にしか無い色で描いてほしい

2.大森元貴『絵画』歌詞考察

2-1.抜け出せない苦悩の中に震え、狂う

震わせて
来る
狂わせて
捨てる
難儀に


羽ばたかせ
千切れる
もぐ
艶美に

冒頭から、不安定な心の震えが直感的な言葉の羅列で表現されています。

感情が「震え」、理性が「狂い」、それでも羽ばたこうとして「千切れる」。

何かを強く求めながらも、壊れそうな姿なのかもしれません。

そのさまを「艶美」と形容することで、痛みさえも美として昇華していく、寛容で広く構えた美的感覚がこの冒頭の神妙さを形作っていますね。

2-2.このまま孤独に消えていきたい


響くは街に
また残酷に
禊の様に
洗う様に

街に響く「鐘」は、時報であったり、何か終焉を知らせるものの象徴でしょう。

祝福ではなく「残酷」に響くという表現に、主人公の孤独や絶望が読みとることができます。

独り居座る孤独な部屋の中から聴くその鐘の音は、同時に「禊」のようでもあり、孤独な痛みを通じて自分が浄化されたいという願望が垣間見えますね。

2-3.孤独でもいいという本心とは真逆の強がり

夢なら覚める頃
孤独にも慣れた
あぁ また嘘をついた
誰にもバレないように
抱きしめてと
洩れないように

夢から覚める現実に、すでに「孤独に慣れた」と語る主人公。

その上で「嘘をついた」と自覚しながらも、それを誰にも知られたくないという、脆くて切実な心情が表れています。

「抱きしめて」と願いながらも、それすら漏らさぬように抑えてしまう。

矛盾とも言える強がりと弱さが同居した一節です。

2-4.「私の中の私」を見て、愛してほしい。

散らかった思考の渦に
呑まれそうな私を
最期まで愛してほしい
飾られる様な絵画にはなれなくても
私にしか無い色で
描いてほしい
せめて私のためだけに
描いてほしい

この節では、主人公の「価値」への渇望が真正面から語られます。

整えられた美しさ(=飾られる絵画)にはなれない、けれど自分だけが持つ色(=個性)で描いてほしいという願い。

「最期まで愛してほしい」とあるように、その願いは深く、切実で、命がけの叫びです。

世間的には素晴らしいと言える人間ではなく、歪んでいるかもしれないけれど、「私にしかない歪み」を愛してほしいということですね。

2-5.自己否定によって潰える自分の「花」

震わせて
来る
狂わせて
捨てる
ページに


咲くことも
知らずに散る
フェミニン

先ほどの冒頭と呼応するような言葉の連なり。

今回は「ページ」という媒体の中で起こる感情の変化が描かれています。

「咲くことも知らずに散る花」は、自己肯定感の低さや、開花することのないまま終わる可能性の儚さを表しています。

「フェミニン」という言葉は、柔らかさと儚さ、あるいは脆さを帯びた自分の女性性への言及ともとれます。

2-6.全てに対して客体で生きていたい

誰にもバレないように
悲しませて
歓ばせてよ

他者との関係性をめぐる複雑な感情。

「バレないように」という一文からは、感情表現すら他人に悟られたくないという自己防衛の気配も感じられます。

もはや、人との関わりというものを放棄して、全ての物事を独りで咀嚼し、感じていたいのかもしれません。

2-7.不完全な自分を自分では認めてあげられない

散らばった理想の海に
溺れる様な私を
最期までポイして欲しい
鮮やかに映す
レンズには傷が目立つけど
私にしか無い理由で
縋っていて欲しい
せめて私のためだけに
歌っていて欲しい

ここでは理想像に縛られ、実際の自分から目を背けてしまう私を「あなたに捨ててほしい」と懇願する姿が描かれています。

「レンズには傷が目立つ」=欠けた自分だけれど、それでも「私だけにしかない理由で縋って」「私だけに刺さる歌を歌って」と訴える姿が切なく、本当は孤独に居た堪れないことが伝わってきますね。

2-8.理想との差が故に自分を叱りすぎてしまう

誰かのせいに
誰かのせいにして
生きてゆけたら
楽なんだろうな

たった二行ですが、ここには主人公の核心的な心理が露わになっています。

「誰かのせいにすること」ができれば楽なのに、そうできない自己責任の世界で生きることのしんどさがにじみます。

主人公は平たく言えば完璧主義。

自分の空想の中に「完璧」と呼べる自分を置いているから、実際の自分と比較して自信をなくし、自分を責めすぎてしまう癖というか、生き方をしてしまっているのかもしれません。

2-9.あなただけには全てを見せれるし、知ってほしい

辛かった非凡と鬱に
呑まれていた
私の海岸を歩いてほしい
見せられぬ程
だらしない今日に明日に
私にしか無い色で描いてほしい
せめて貴方の部屋に
その絵画を飾ってほしい

「私の海岸を歩いてほしい」という比喩は、自分の痛みや過去に寄り添ってほしいという願いです。

さらに言えば、感情という海をかたどる縁である「私の海岸」は、主人公の核心の輪郭と言えるでしょう。

そこを歩くと言うのは、主人公の果てしなく深い核心、感性に触れるということです。

そこを迷わずに「あなた」になら曝け出せる…。

あなたには私の全てを知っておいてほしい。

そんな祈りが伝わります。

その上で「絵画を飾ってほしい」とは、私という存在を、あなたの大切な空間に置いてほしいという執着にも似た承認欲求が読み取れます。

2-10.自分で自分を許せない、だからこそ他人に理解されたい

虚しさが残る
血管を泳ぐ
不安のループに踊る
私を許して

繰り返されるこの節では、「許して」という言葉が印象的です。

不安と虚無に苛まれながらも、それでも許しを乞う。

自己否定の裏にある、理解されたいという祈りがここにあります。

2-11.孤独を選んでも、最期に残るのは虚しさだった

また鐘が鳴る
冷えた部屋に残る
私の影を
貴方は探してくれる?

私にしか無い色で描いてほしい

最後の問いかけは、静かでシンプルでありながら非常に重いですね。

「私の影」はもしかしたらこの世にいないのかもしれません。

それでも「探してくれる?」と問い、「私にしか無い色で描いて」と訴える。

孤独でもいいと受け入れたはずの魂の、最後には「他者との繋がり」を求めてしまった虚しい祈りが遺されて、この曲は終わります。

おわりに

『絵画』というタイトルに象徴されるように、この楽曲は“自分という存在”を「描いて遺してほしい」という一心で綴られた詩です。

完璧ではなくても、美しくなくても、「私にしかない色」にこそ意味があるはず…。

そう信じてはいたけども、自分で自分を受け入れることができなかった主人公は、結局他人に縋ることしか選べなかったのでしょう…。

大森元貴さんの繊細で壮絶な世界観が、見る人・聴く人に深く突き刺さる一曲です。

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