今年でメジャーデビューから20周年となるRADWIMPSが、NHK連続テレビ小説「あんぱん」の主題歌として「賜物」を書き下ろしました。
今回の記事では、曲の概要と歌詞の意味について紐解いていきたいと思います!
あんぱん主題歌「賜物」はどんな曲?
連続テレビ小説の第112作目となる「あんぱん」は、アンパンマンの作者であるやなせたかしと妻の小松暢をモデルにした、夢を諦めないで生き抜いていく夫婦の物語です。
この楽曲を書き下ろすにあたって、作詞作曲の野田洋次郎は
を主眼にしたとコメントしてます。
楽しい事だけではなく、苦悩も多い人生を歩みながら、夢を追い求めて毎日前を向いて生きていく夫婦の姿を歌詞の中に落とし込んでいます。
RADWIMPS「賜物」歌詞
涙に用なんてないっていうのにやたらと縁がある人生
かさばっていく過去と視界ゼロの未来
狭間で揺られ立ち眩んでいるけど
「産まれた意味」書き記された手紙を僕ら破いて
この世界の扉開けてきたんだ
生まれながらに反逆の旅人
人生訓と経験談と占星術または統計学による
教則その他、参考文献溢れ返るこの人間社会で
道理も通る隙間もないような日々だが今日も超絶G難度人生を
生きていこういざ
いつか来たる命の終わりへと近づいてくはずの明日が
輝いてさえ見えるこの摩訶不思議で愛しき魔法の鍵を
君が握っててなぜにどうして?馬鹿げてるとか思ったりもするけど
君に託した神様とやらの采配万歳
この風に乗っかってどこへ行く
生まれたての今日が僕を呼ぶ
「間違いなんかない」って誰かが言う
「そりゃそうだよな」とか「ないわけない」とか堂々巡れば
悲しいことが悔しいことがこの先にも待っていること
知っているけどそれでも君と生きる明日を選ぶよ
まっさらな朝に「おはよう」
感情線と運命線と恋愛線たちが対角線で
交錯して弾け飛び火花散り 燃え上がるその炎を燃料に
一か八かよりも確かなものは何かなんて言ってる場合なんか
じゃないじゃんかいざ
どんな運命でさえも二度見してゆく美しき僕たちの無様
絶望でさえ追いつけない速さで走る君と二人ならば
「できないことなど何があるだろう?」
返事はないらしいなら何を躊躇う
正しさなんかにできはしないことこの心は知っているんだ
There’s no time to surrender
時が来ればお返しする命 この借り物を我が物顔で僕ら
愛でてみたり 諦めてみだりに思い出無造作に
詰め込んだり 逃げ込んだり
せっかくだから 唯一で無二の詰め合わせにして返すとしよう
あわよくばもう「いらない、あげる」なんて呆れて笑われるくらいの命を生きよう
君と生きよう
「賜物」歌詞考察
涙に用なんてないっていうのに やたらと縁がある人生
かさばっていく過去と 視界ゼロの未来
狭間で揺られ立ち眩んでいるけど
涙に用なんてないけど、やたらと縁がある
このフレーズは、涙を流してしまうような悲しみや苦しみを求めてなんかいないけど、やたらと涙に縁がある人生を過ごしているようです。
つまり、今辛い境遇にあるという事でしょう。
かさばっていく過去と視界ゼロの未来は、かさばっていくという表現から考えても、過去にも辛い事が山のように積み重なっていて、辛い過去のせいで明るい未来を想像出来ずにいます。
積み重なった辛い過去と、望みのない未来の狭間で揺られて、どうしたら良いのかが分からなくなっているようですね。
「産まれた意味」書き記された 手紙を僕ら破いて
この世界の扉 開けてきたんだ
生まれながらに反逆の旅人
ここの歌詞面白いですよね。
その人が産まれた意味というのは、何かしら持っているはずだと考えているんですね。
この曲では「意味が書き記された手紙」として登場します。
しかし、産まれてくるときにその手紙を自ら破ってしまい、そのせいで「自分がなんの為に産まれたのか」分からなくなってしまっています。
冒頭の歌詞と合わせて考えると、主人公は現状過去に辛い事が積み重なり、その経験から未来にも希望を持てずにいます。
「何の為に産まれたのか、そしてこれから何をしていけばいいのか」
これが分からなくなっているんですね。
何かこのフレーズに聞き覚えはありませんか?
そう、やなせたかしが生み出したアンパンマンのオープニングとして使用されている「アンパンマンのマーチ」の歌詞の一節にも、似た文言が登場します。
なんのたまに 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
辛い現状でも希望を捨てず
人生訓と経験談と占星術または統計学による
教則その他、参考文献溢れ返るこの人間社会で
道理も通る隙間もないような日々だが今日も超絶G難度人生を
生きていこういざ
昔と違って今は、色んな人の経験談や占星術、統計学による教訓などの参考文献が溢れていますよね。
自己啓発系のSNSも増えてきていますし、生きる上での参考になったり勇気づけられたりする事も多いです。
しかし、そんな参考文献があり溢れたこの人間社会でも、納得出来ない理不尽が多く降り掛かってしまうのが現実。
実際に不幸が降り掛かってしまった本人からしてみると、その瞬間は参考文献なんてあまり役に立たないですよね。
こんな人間社会で生きていくことを「超絶G難度」と表現することで、人として生きる事の大変さを表しています。
それでも「今日も超絶G難度人生を生きていこう」と言葉を投げかけることで、自らの足で立ち前に進むという覚悟が伝わってきます。
ネガティブは結局自分の心に発生するもので、言ってしまえば「気の持ちよう」で何とかなってしまう事も多いんですよね。
いつか来たる命の終わりへと近づいてくはずの明日が
輝いてさえ見えるこの摩訶不思議で愛しき魔法の鍵を
君が握っててなぜにどうして?馬鹿げてるとか思ったりもするけど
君に託した神様とやらの采配万歳
主人公目線では「明日」というのは視界0であって、いつか必ずやってくる命の終わりに近づいていくだけのものでしか無いはずなのに、その明日が輝いて見えてしまう。
ここで「君」が登場します。
明日への道、夢への扉を「君」が持っている、だからこそ「君」がいれば明日へ進むことができるし、君と一緒に明日へ、そのまた明日へと進み続けて行けば夢を叶えることができると信じている様子が分かります。
暗く重たい人生を歩んでいた主人公が、「君」をどれだけ愛しているかが伝わってきますよね。
この風に乗っかってどこへ行く
生まれたての今日が僕を呼ぶ
「間違いなんかない」った誰かが言う
「そりゃそうだよな」とか「ないわけない」とか堂々巡れば
悲しいことが 悔しいことが この先にも待っていること
知っているけれど それでも君と生きる明日を選ぶよ
まっさらな朝に「おはよう」
この部分は割とストレートな歌詞で突き刺さりますね。
辛い事や悩み事がある時に「間違いなんかない」と言葉を投げかけてくれる人がいるでしょう。
それを素直に受け止める事もあれば、「ないわけない」と否定したくなる時もありますよね。
けれど、どっちが正しいのかなんて結局のところは誰にも分からないんですよね。
確かなのは、「悲しいこと 悔しいことが この先にも待っていること」ただそれだけです。
生きていく上では避けることは出来ないでしょう。
明日という死に1歩近付くだけの先の見えない道をもうこれ以上歩いていきたくはない。
それでも君が傍にいてくれるならば、明日に進んでいく道を選ぶよ。
私はこういう風に解釈しました。
まっさらな朝におはよう
このセリフは、主人公が君という存在のおかげで前向きに生きることが出来ている事を表しています。
どんな運命でさえも二度見してゆく美しき僕たちの無様
絶望でさえ追いつけない速さで走る君と二人ならば
「できないことなど何があるだろう?」
返事はないらしいなら何を躊躇う
正しさなんかにできはしないことこの心は知っているんだ
There’s no time to surrender
運命すら2度見してしまうくらい無様な人生でも、それを美しいと思っているようです。
君が一緒なら、絶望が迫ってくるよりも速く走ることができると信じています。
君が隣にいながら「できないことなんて何があるのだろう?」と人生に問い掛けても返事はない。
なら、躊躇って立ち止まる意味はない。
正しさだけでは出来ないことがあると心では分かっているようです。
未来の心配なんて、これから起きるかもしれない事象を心配しているだけに過ぎず、まだ起きていない可能性に怯えて立ち止まる事は、人生を諦めるのと同じでしょう。
時が来ればお返しする命 この借り物を我が物顔で僕ら
愛でてみたり 諦めてみだりに思い出無造作に 詰め込んだり 逃げ込んだり
せっかくだから 唯一で無二の詰め合わせにして返すとしよう
あわよくばもう「いらない、あげる」なんて 呆れて 笑われるくらいの
命を生きよう
君と生きよう
命を神様にお借りしているという表現がまた面白いですよね。
死の瞬間がやってきたら、それは神様に命をお返しする瞬間だというふうに言っています。
お借りしているこの命を、さぞ我が物顔で愛でたり諦めてみたり、色んな思い出を詰め込んでみたりする訳です。
でも、せっかくならば「いらないよ、あげる」と言われてしまうくらい唯一無二のものにして返してしまおう。という前の向き方をしています。
歌詞の最後は「命を生きよう 君と生きよう」
自分にしか出来ない染め方で命を特別なものにして返す、けれどそれには君が必要だよ。
そういった意味が込められている素敵な歌だなと思いました。
賜物という言葉の意味には
・いただき物
・結果として生じた良い事柄
などの意味があります。
この歌でいう賜物は「命」そして「君」
神様からお借りしたいただき物の命を必死に生き抜いてきた結果、「君」という存在が現れてくれた。
夢を追い求めて毎日を生き抜く夫婦の物語にぴったりな楽曲と言えますね。